
量子時代の暗号リスク、ウォレットとコンセンサスで影響分かれる
暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が、量子コンピュータがブロックチェーンに与える影響を整理したポジションペーパーを4月21日に公表した。同社は同ペーパーにおいて、現時点で暗号資産は安全としつつも、将来的な脅威に備えた準備を早期に開始すべきと指摘している。
同ペーパーは、スタンフォード大学やテキサス大学オースティン校、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)などの研究者で構成される「量子コンピューティング・アドバイザリー・カウンシル」が作成したものだ。なお同カウンシルはコインベースが今年1月に設立したと発表した量子コンピューティングに関する独立諮問委員会とみられる。
同ペーパーによると、量子コンピュータは将来的に、現在のブロックチェーンで広く使われている公開鍵暗号を破る可能性があるという。ただし、その水準の計算能力を持つ量子コンピュータは現時点では存在しておらず、実用化までは少なくとも10年以上かかるとの見方が有力とされている。
また同ペーパーでは、ブロックチェーンやウォレット、取引所といった分散型システム全体の暗号方式を量子耐性へ移行するには一定の期間がかかると指摘されている。そのうえで、量子コンピュータの実用化時期が不確実であることから、「緊急になってからでは遅い」として早期の対応開始をコインベースは推奨している。
同ペーパーによると、量子コンピュータの影響はブロックチェーンの全領域に一様に及ぶわけではない。
コインベースは同ペーパーにて、ビットコイン(Bitcoin)について、資産の所有権を証明するデジタル署名の部分に影響が及ぶと指摘している。公開鍵が既にオンチェーンで露出しているウォレットの保有分は約690万BTC ($77,608.00 · Live)にのぼり、これらの資産は量子リスクに該当する可能性があるとしている。一方で、マイニングやハッシュ関数、過去の取引履歴については大きな影響を受けないと説明している。
さらにコインベースは、ビットコイン以外のブロックチェーンについても、資産の所有権を証明するデジタル署名に同様のリスクがあるとしている。さらにそれに加え、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するブロックチェーンは追加的なリスクがあると指摘している。
その理由として、PoSではブロックの提案や検証といった合意形成にも署名方式が用いられている。このため同ペーパーは、量子コンピュータによって署名が偽造可能になった場合、バリデーターのなりすましや不正なブロック承認が理論上可能になると説明している。
一方で、PoS型ブロックチェーンのリスクについては、設計によって影響の大きさが異なるとの見方も出ている。
レイヤー1ブロックチェーン「ソニック(Sonic)」の研究チームは4月20日付の公式ブログで、PoSチェーンが採用する署名の集約(aggregation)手法が量子耐性への移行を難しくしていると説明している。一方で同チームは、量子耐性への移行の難易度はコンセンサスアルゴリズムそのものではなく、実装に用いられる暗号方式や設計に依存するとの見方を示している。
その点について同チームは、自らのプロトコルでは単一の署名とハッシュ関数のみを用いる構造とすることで、量子耐性への移行を「署名方式の置き換えのみ」で実現できると主張している。
なおコインベースは、量子耐性への移行は単一の企業やプロジェクトで完結するものではなく、業界全体での協調が必要だと強調している。
また同社は、アップグレードされないウォレットや休眠アドレスについて、凍結や無効化などを含めた対応が必要になる可能性があると指摘している。そのうえで同社は、各ブロックチェーンが方針を事前に検討し、公表する必要があるとしている。
同ペーパーによりコインベースは、量子コンピュータの実用化は依然として先の話だとする一方で、その影響がウォレットだけでなくコンセンサス設計にも及ぶ可能性があると指摘している。どのような設計が将来的な移行に耐えうるかが、今後のブロックチェーンの重要な論点となりそうだ。
Quantum computers can’t break your crypto yet.
We want to make sure it stays that way.
We assembled a board of researchers from Stanford, UT Austin, and the Ethereum Foundation to figure this out years before it matters.
Their first paper is out now ↓ https://t.co/kUElennL4i
— Coinbase
(@coinbase) April 21, 2026
参考:コインベース・ポジションペーパー・ソニック
画像:PIXTA
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